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その本はあなたを待っている
何気もない秋の夕暮れが差し込む放課後。二人の女友達と私は教室で会話を楽しんでいる。そう、今から言い出す話をするまではただただ楽しんでいただけのはずだった。
「そんなことがー。あっ、そうそう。二人は知ってる?『黒い本』っていう怪談……」
「あー、知ってる知ってるぅ。由香(ゆか)は?」
二人の友人は私の返事を期待して待っているようだった。もちろん、私は知らない。だからこそ彼女たちにホントのことを素直に言う。何だか気分が落ち着かない。その話をしたら何か嫌なことがありそうとか思ってしまう気分だろう。だからそのためにこう素直に言う。
「ごめん、知らない……ってかやめよう?」
「なになに?由香、もしかして怖いの?」
友達の一人が私を煽るかのようにして私の表情を伺っている。いつもそんな自分に対して思ってしまうことではあるが、そんなこと言われたら素直に「そうだよ」とか言って引き上げればいいのに、私はついついそれに反抗して彼女たちに合わせようとするのである。もちろん、今日もまた合わせてしまう。
「別に怖くなんかないよ?聞かせて」
彼女たちはそんな私に対してにこやかにお互い微笑み合う。
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