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彼女とカメラと消える僕
「試してみてもいいですか、『センパイ』。──あなたがこのカメラに写るのかどうか」
そう言って、彼女は通学用のかばんから取り出したカメラのレンズを僕に向けた。
果たしてファインダーの向こうに僕が写っているのか、僕自身にも分からなかった。
「……その呼び方は止めてくれ。僕はもう学生じゃない」
「でも同じ学校の制服を着て、年上の人なら、それはもうセンパイと呼ぶべきでは?」
「箇条書きマジックって言うんだよ、そういうのは」
「そうですかねぇ。ま、わたしは好きに呼ばせてもらいますけど……あ、そのまま、動かないで」
彼女がシャッターを切り、カシャ、という控えめな音が雪の舞う空に響いた。
「……どうだった?」
「気になりますか?」
「まぁね。オカルト番組は好きな方だったし」
そう答えると、彼女は少し意地悪な顔をして微笑んだ。
「ふふ。そのオカルトに自分がなった気分はどうですか、センパイ?」
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