第三章 瓦解

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 月に一回の所長会議は、業績の報告だけに終始し、現状打破のための建設的意見はなにも出なかった。このような状態がしばらく続いた。相変わらず、プロモーターの赤木と銀座のクラブ「deep sea」には入り浸っていた。「やっと社長にいい報告ができそうです。キューバの世界チャンピオンと日本の世界ランカーのタイトルマッチが後楽園ホールでできそうです。もちろん、フェニックスプロモーションでマネージメントします。世界チャンピオンは私が呼んでます。ボクサーパンツに当社の社名を入れて宣伝できます。あまり儲かりませんが、名前だけは売ることができます。テレビ中継も決まってます。」「それはいい報告です。内部で悪くいうのが多くなってきたからちょうど良かった。乾杯しよう。ママ、ドンペリをお願い。」「社長、ドンペリだなんて久しぶりね。なにかいいことでもあったの。」「やっと、ボクシングのプロモートができそうなんだ。」「赤木 さんが貢献したのかしら。」「そうだとも。これをきっかけにフェニックスタクシーの反撃開始と行こうじゃないか。」赤木は話を続けた。「社長のところにいらっしゃる笹岡さんは、かつてブリザードというバンドでボーカルをやっていて有名な方だったという話を芸能プロダクションの方から聞きました。その後の彼女ということで、特集記事を組みたいそうですよ。どうしますか。上手く私が間を取り持ちますが。」「そうか、そんな話があるのか。彼女に聞いてみよう。承諾するかな?」はじめは、仕事一筋で生きてきた男なので世間知らずであった。「deep sea」のママと赤木は出来ていた。はじめから巧妙に自分たちにお金を還流させるための罠を張り巡らせていた。ボクシング事業の売上は全く計上される見込みがなかった。疑問を持つものが多かったが、そのことを社長に伝えると解雇された。フェニックスプロモーションにお金が合法的に流れるような仕組みが できたばかりに、フェニックスタクシーの業績も低迷さに拍車がかかった。     
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