彼のとなりに立つ条件

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「分かった」 「よっしゃ!」  まぁ、やる事も特になく暇を持て余していたから別にいいや……と、納得した。 「あっ、そうだ。お前、名前は?」 「お前じゃなくて『(みなと)』って名前があるんだけど」  あの時、思わず憎まれ口を叩いたが、そういえば、彼に名前を聞かれるまで実は自己紹介をしていなかった事を後になって気がついた。 「そっか、俺は黒佐古(くろさこ)涼太(りょうた)って言うだ。よろしく! 湊!」 「よっ、よろしく」  太陽の様に明るい笑顔とともに、彼は手を差し出した。 「おうっ!」 「……」  その手を取って、立ち上がらせられて時ようやく気がついた。 「? どうかした?」 「いっ、いや」  彼の身長が、この当時から「かなりデカイ」と言われていた私よりも頭一個分高い……ということに。 ◆  ◆  ◆ 「おーっす! (みなと)っ!」 「おはよ」  いつもと同じように元気な声と共に、涼太は私の左肩をポンッと軽く叩いた。 「……」  初めて声をかけられ、遊んだ日から私と涼太はほとんど一緒に行動を共にしていた。  もちろんそれには『理由』がある。ものっすごく簡単で明確な『理由』だ。 「あー、そういえばこの間借りた本。今日返すな」 「へぇ、涼太でも理解出来たんだ」  そう、私と涼太の家はかなり近いところに……というか、私の家を二軒間に挟んだところにあった。  まぁ、それも遊んだあの日に分かったコトだ。 「むっ、失礼なヤツだな」 「この間のテスト結果を見ているとね」  私がそう言うと、涼太は「うっ」と痛いトコロを突かれた……といった表情になった。 「いっ、いやー。でも、赤点は何とか避けている訳だし」 「私がノートを見せている上に、教えているからでしょ」  小学生の頃はそこまで思わなかったが、中学生になると、涼太の頭の悪さが徐々に露呈(ろてい)していった。 「むしろ私に感謝してくれてもいいくらいだけど?」 「本当に感謝しています。お陰さまで遠征に参加できます」  涼太は改まった口調で深々と頭を下げた。確かに、この間のテストで赤点になってしまうと遠征に参加できなかった。
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