彼のとなりに立つ条件

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 涼太が言っている事は珍しく的を射ている。 「それに何よりまた一緒に登下校が出来る!」 「それが一番の目的でしょ」  なんだかんだあれこれと考えていながらも涼太の「また一緒に登下校が出来る」という言葉は、実はちょっと嬉しかった。 「えー、いいじゃんかー」  でも、簡単に承諾するのはなんか嫌だった。 「ちょっと考えさせて」  だから、その場で返事はせず、涼太の提案は一時的に保留にした。  でも結局、この話の二週間後に、私は男子バレーボール部のマネージャーになった。かなりしつこく勧誘されて……根負けした形になってしまったけど……。 ◆  ◆  ◆ 「好きです。私と付き合ってください」  偶然、通った廊下の近くからそんな言葉が聞こえてきた。 「はぁ」  ため息はついているが、それは告白をしている人に対してではなく、偶然通りかかってしまった自分に対してである。  中学の時も何度かこういった話を聞くことはあったが、高校になるとそういった機会が多くなっていた。  別に、そういった話をするな……とは言わない。  場所とかタイミングを選んで欲しい……とは思うが、こればっかりはどうしようもない。 「本当に最近多いよねぇ。そういった話」 「恋愛話?」 「恋バナね。(みなと)も何かない?」 「ない。マネージャーの仕事に勉強でいっぱいいっぱいだから」  私たちは、あっという間に三年生になっていた。  マネージャーになった後、全国に出場したり、その試合の為に遠征したりその合間をぬって勉強に当てたり……と目まぐるしい日々を送っていた。  もちろん、それは分かりきっていたことだから別に文句なんてない。 「まぁ、そうだよね……うん。愚問だったわ」 「ご理解いただけてなにより」 「でも、聞きたくなくても『偶然』ってあるよね」 「そこは仕方ないでしょ」 「分かっているんだけどね。あっ、そういえば、湊の幼馴染。かなりモテるらしいね」 「らしいね」 「なーに? 気にならないの?」 「別に? あいつ、好きな人いるらしいから」  ついさっき聞いてしまった『告白』は、聞きたくなくても否応なしに耳に入ってきてしまったのだから、仕方がない。
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