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「黒佐古、見なかったか?」
「いえ、見ていませんけど、どうかしましたか?」
「いや、後で部活の時に言うが、実は黒佐古にユース代表の召集がかかってな」
「ユース代表って、日本代表ですか!?」
「あっ、ああ。出来るだけ早く伝えたかったんだが、見当たらないなら部活の時に言えばいいだけか。とりあえず本人見かけたら職員室に来るよう言ってくれ」
「あっ、はい」
そう言って戻って行く先生後ろ姿を見送りながら「いつかはそうなるかな?」と軽く思っていた事が、現実味を帯始めている事に……なぜか、私は急激に不安になっていた。
もちろん、涼太はルンルンで合宿に参加した。そして、告白されるの回数も倍増した。
元々、身長も高く顔も……悪くはない。頭は多少残念だが、それすらも「かわいい」で済んでしまうあたり、かなり寛大だ思う。
しかし、涼太はずっと「好きな人がいる」と言って全て断っていた。
「ニャーン」
ベンチに腰掛けいると、ゆっくりと猫が一匹近寄ってきた。撫でてると、可愛らしくノドを鳴らした。
「ふふ、かわいい」
思い返してみると、私はこの公園で初めて涼太と出会った。何だかんだで長い年月を共に過ごしてきた。
もちろん喧嘩もしたし、それと同じくらい仲直りを繰り返した。
「ニャーン?」
猫は、不思議そうな顔で私の方を見上げた。ずっと一人で読み飽きた本を読んでいた私に彼は、話しかけてくれた。
本当は……とても嬉しかった。
「離れたくない」
ぎゅっと猫を抱き締め、猫は少し苦しそうな声で鳴いた。
「あっ、ごっ……ごめんね。痛かったよね」
鳴き声に驚いて、思わず猫を手離してしまった。
猫も驚いて飛び降り、地面にフワリと着地した。思わず「フン!」とでも言いたそうにそのまま去った。
悪いことをしてしまった。なんて思っていると、突然背後から「あっ!いたーっ!」と言う大きな声が聞こえた。
「ったく、なんで先に帰っちまうんだよ」
「じっ、時間がかかりそうだったから」
「はぁ、余計な気遣いしなくていいんだよ」
「いや、でも」
今日、涼太が遅くなったのは告白をされていたからだ。
しかも、今日の告白相手は文化祭で美女一位なった人だ。断る理由はないだろう。彼のとなりには、きっとそんなキレイな人がいい。絶対、私なんかより……。
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