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そしていらっしゃい。歓迎するよ。
君はたった今から約三百年ぶりに外の世界から来た唯一の魔術師の弟子になる。
戸惑いは多く、苦痛と苦悩に満ちた世界だが、そこには君の求める何かが必ずある。
だから希望をしっかりと胸に抱いて、絶やすことなく燃やし続けなさい。それは不安や恐怖を鈍らせる麻酔にもなり、この先君の歩むべき道を明るく照らし出してくれる。
レオナルドはそこで一旦言葉を噤み、改めてブランドを見つめた。
彼はレオナルドの勧めた椅子に小さく尻を乗せ、これから踏み込んでいく世界への不安と小さな希望の種火を点してきらきらと眸を煌めかせ、陽炎のように全身を震わせていた。
レオナルドはその姿にかつての遠く、古い記憶を水に滲んだコピー用紙の如く脳内にじわりと滲み出させ全身に木漏れ日をめいっぱい浴びた時のような力が漲ってきた。
それは穏やかに弧を描く口許に現れ、ブランドの肩(まるで小動物のように震えていた)をしっかりと握るとついには感に堪えたような微笑みを顔全体に行き渡らせ今一度ブランドに優しい声を降らせた。
幼いときにレオナルドが耳にした言葉を、ブランドに贈るこの日をレオナルドはずっと心待ちにしていた。
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