脱走名人

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七年後。 ブランド・オズワルドはデスクで頭を抱えていた。 デスクの上には無造作にこの区域全土を書き記した地図が放り出されてあったが、それは折り目から今にも破れそうなほど古ぼけけいる。そこに様々な色のペンで○や×といった記号が大きく、そして所狭しと並んでいるのはごく最近書き込まれたもののようで、まだ紙に馴染みきっていないインク達が古ぼけた浅い色味の地図の上で極彩色にてかてかとてかっていた。 この三日ほどまともに眠っていないブランドの紅く美しい色をした眸の下の白い皮膚には深い隈がくっきりと浮かび上がり、今年で18にもなろうかというブランドであったが、深い隈はブランドの表情から若々しさの一切を奪い取っているようだった。 そして特に酷いのはその疲労から初老男性のような草臥れた表情を浮かべる顔ではなく服装だった。 シャツの胸元には大きな範囲に渡って虹色に禍々しく照る油が染み着いて胸に張り付いているし袖口は泥や汗で汚れ、片手のボタンが取れてしまって糸が情けなくぶら下がっている。顔や、朝はきっちりと撫でつけられていただろう乱れたブロンドの髪も泥にまみれて、まるで紛争地を命辛々逃げてきたかのようだった。     
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