1人が本棚に入れています
本棚に追加
椅子の背もたれに投げ出してあるジャケットには大きなヒグマにでも襲われたような四本の鋭く裂けたひっかき傷が今でも未だ引っかかれた時の衝撃を残しているかのように踊っていた。
「随分手酷くやられたようだね。」
そこへ日溜まりのような暖かい声が降った。それは睡眠不足で働きが鈍足になっていたブランドの脳味噌にもすぐさま染み渡って凝り固まっていた疲れを僅かに癒した。
地図から顔を上げ、背後より現れた声の主を仰ぎ見る頃には、先ほどまでの老いた表情は見事になりを潜め、代わりにあるのは今にも輝かんばかりに笑みを浮かべた隈の深いものの年相応のあどけなささえ残したブランドの顔だった。
「レオさん。どうでした?」
「実に有益かつ不毛な勉強会だったよ。ex派が多くてね。いや、それは別に毎回なのだがev派は議論に混ぜてもくれないさ。」
最初のコメントを投稿しよう!