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『レオさん』と呼ばれた男は、ブロンドの髪を丁寧に梳き撫でつけていて、紳士という文字がよく似合う立派な服装をして、革製の古風なトラベルバックを片手に下げ、反対の手にはステッキまで持っている今年49歳の中年男性だった。眸は青く、そして背は高く、品の良い顔立ちをしていてその中でも特に整った薄い唇には仏のような優しさに満ちた微笑みを作ってブランドを見下ろし、着古してはいるものの上等なコート脱ぎながらブランドが毎回自分に詳細な話をせがむ“勉強会”についての触りを語って聞かせた。
「でも有益だったんでしょう?」
『有益かつ不毛』とはレオナルドの口癖であり、その口癖が開口一番に飛び出すという事は、二ヶ月に一度開かれる勉強会から戻る度に「退屈だった」と愚痴をこぼしているレオナルドが、“少なくとも退屈はしなかった”ということだろう。それにブランドは直ぐ様感づき、好物でもねだるようにしてレオナルドの顔を椅子に腰掛けたまま伺う。
それに対してレオナルドはコートをコート掛けに引っかけながら思わず吹き出してしまった。
「ブランド君。私も身なりにそれほど気を配るわけではないけれど、そこまで酷い格好でデスクを陣取ったことはないよ。それにこの臭いはファットキャットだろう?早く洗わないとその臭いは一生染みつくぞ。」
「そーなんです!」
突如ブランドが興奮気味にデスクをばんと叩いた。
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