脱走名人

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脱走名人

やあ、おはよう。いい天気だね。 初日から遅刻とは君も随分と度胸が据わっているな。 いや、いいんだ。実に良い。それだけ大きな声で謝れる元気があるのは結構。私は怒ってなどいないから安心してくれて良い。遅刻程度で一々怒髪天を衝いていてはエネルギーの無駄遣いだと思わないか? だがね、君が今日から足を踏み入れようとしている世界の他の住人たちは、生憎遅刻は嫌いでね(私もどちらかと言えば好きな方ではないのだが)。 それを頭に置いておいて、これからはよく気をつけるように。 私も初日から弟子を説教するような真似はしたくないから、本題に入ろう。 さあ、その椅子に掛けて。まずは水でも一口飲むと良い。その額の汗、よほど一生懸命に駆けてきたんだろう? それとも冷や汗かな。 実を言うと入口で君は逃げ帰ってしまうんじゃないかと心配していたんだよ。ほら、入口はとてもユニークだっただろう? 私の説明なんかより見せてしまった方が早いと思ったものだから。すまない、少し飾り付けが過ぎてしまったようだ。その様子では。 さて、本題だ。(ここでレオナルドは両手をぱちんと打ち鳴らした) 本日は来てくれてありがとう、ブランド・オズワルド君。     
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