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綾乃の休日は平日が殆どで、連休は取れないことが多かった。しかし綾乃は1人静かに家で読書が出来る休日を楽しみにしていた。
そんな日常を過ごす綾乃には大きな悩みがあった。
高校生の頃にADHDと診断されてからと言うもの、自分は人とは何か違うのだと言う思いが綾乃を支配していた。
仕事中もメモをしたことを忘れては、仕事に支障を来し、叱られることが多々あったのだ。
(私、本当にダメな子だな……)
綾乃は叱られる度に落ち込んでいた。そしてそのことが劣等感へと繋がり、自分への自信は全くなかったのだった。
(どうして、出来ないんだろう……?)
自分は仕事が出来ない。そうやって必要以上に自分を追い込む日もあるのだった。
「なーに暗い顔をしているの?」
「石川先輩……」
そんな時、必ずと言っていいほど明るい声で綾乃に話しかけてくれる人物がいた。石川咲希だ。咲希は綾乃の3つ年上の同じ大学を出た先輩だった。同じ大学卒業だったこともあり、綾乃は咲希のことを『石川先輩』と呼んでいた。
「もう。そんな暗い顔で接客するの?」
咲希は明るく注意する。もうすぐピークを迎える時間だ。暗い顔での接客は確かに戴けないだろう。分かってはいてもすぐには切り替えられない自分もいた。
「大丈夫! 綾乃はちゃんと仕事しているんだから!」
咲希は綾乃の背中をぽんぽんと叩いて、その場を去っていった。
(私、本当に仕事できているんだろうか……)
綾乃は半信半疑になりながらも、咲希の言葉を有り難いと感じていたのだった。
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