4-9.魔女は応援を手配する

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4-9.魔女は応援を手配する

 白い鳩が届けた手紙を開き、ドロシアは言葉を失った。傲慢で自分勝手なあの男が頼みごと、それも素直な文面が並んでいる事実に驚く。  ドロシアも同じだが、ウィリアムは非常にプライドが高い。生まれや育ちではなく、上り詰めた地位や立場を誇るだけの能力を持っているからだ。己の持つ人脈、能力、才能、すべてが他者より優れているという事実に基づいたプライドだった。  それゆえに、他者を頼ることを良しとしない。頭を下げて頼むなど、よほど追い詰められる事態なのだろう。くすくすと淡い金髪を揺らしてドロシアは笑った。 「いいわ、協力してさしあげてよ?」  報酬は後から、目を瞠る程の高額を請求してやろう――文句を言いながらも彼は用意するだろう。互いに貸し借りなど残さぬよう、盛大に吹っかけてやるのがドロシア流の気遣いだった。  魔女の証と罵られた濃い(すみれ)色の瞳を伏せ、ドロシアはしばらく考え込む。座っていた猫足の椅子から音もなく立ち上がると、彼女は優雅な足取りで部屋を後にした。     
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