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「いけ! 殺せ!!」
己を鼓舞する叫びが聞こえてくる。
世の倣いとはいえ、暗殺する気なら黙って後ろから攻撃すべきだろう。そんなだから、子爵令嬢含め失敗を繰り返すのだ。冷静に批判しながら、ウィリアムが親衛隊に合図を送った。
わずか12名だが、生え抜きの精鋭部隊だ。与えられた役割と己の果たすべき使命を理解した親衛隊は、傭兵達を受け止める扇形に展開した。
「そこをどけっ!」
叫んで飛び込む傭兵に、親衛隊は無言で剣を抜いた。両刃の剣が光を弾き、上官の指示を待つ。
「迎え撃て。可能なら1人生かしておけ」
冷めたウィリアムの命令に「かしこまりました」と返答し、彼らは一気に走り出す。馬の機動力を生かし、一気に敵を包囲した。剣を交える音を聞きながら、ウィリアムは周囲に気を配る。
彼らが囮の可能性を考えてたのだ。別の方角から駆け寄る存在がいないか、警戒するウィリアムの三つ編みを掴んだエリヤが馬車を指差した。
「ウィル、こっちだ」
言われた通り視線を移し、ウィリアムは大きく溜め息を吐いた。侍女たちを乗せた馬車から走り出た2人の青年が、大きな剣を振りかざす。
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