4-4.仕える主は選べない

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 この馬車に荷物を積んだのは……たしか、スガロシア子爵家の侍従だった。つまり、馬車に積んだ荷物の中に隠れていたのだろう。分かりやすい構図に、彼らが失敗など想定していないと知る。奇襲が成功すると信じているのだ。 「なんて愚かな……」  頭を抱えたくなるが、そんな余裕はさすがにない。一息ついて黒馬の背を叩いた。慣れたようにリアンはぶるると身を震わせ、大人しく数歩歩いて足を止める。 「ちょっと行ってくる」 「わかった」  簡単すぎるやりとりに、互いの命の心配は含まれなかった。エリヤは己の騎士が負けると微塵も思わないし、ウィリアムも少年王を傷つけさせる気はない。  軽い所作で馬から飛び降り、ウィリアムは剣を抜いた。途端に彼の殺気が噴出すように青年達へ向けられる。戦い慣れしていないのか、足が竦んだ彼らに剣の先を向けた。  大きく振りかぶるような真似はしない。水平に突き出した剣が陽光を弾いて輝いた。2人の力量を図るまでもなく、実力差は明らかだ。ただの盗賊なら見逃す手もあるが、国王暗殺の刺客ならば生きて返す理由はなかった。 「…仕える主を間違えたな」  馬に乗って囮になった傭兵8人ほどの集団は、すでに全員が斬り捨てられた。ちらりと横目で状況を確認し、残った2人に忠告する。 「剣を捨てろ」     
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