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突き立ててしまえば抜くのに時間がかかる。肩から腹部まで切り裂いて動けなくし、次のターゲットへ踏み込んだ。身を捩った男の首を一撃で落とす。転がる頭部を追う形で血が噴出した。
「やっちまった」
ミスしたと舌打ちしたのは、返り血を浴びたからだ。最前線ならば問題ないが、この後も国王であるエリヤに随伴する身として、血に染まっているのは考え物だった。
まあ、すでに浴びてしまったものは仕方ない。溜め息をついて剣を一振りして血を落とす。軽く拭って鞘に収めた。
「お待たせいたしました」
親衛隊の手前、膝をついて賊の討伐完了を報告する。愛馬の上に残した主は、子供らしい仕草で立ち上がるよう命じた。
「ご苦労。こちらへ」
「はっ」
素直に近づくが、ふと気付いて足を止める。案の定、エリヤは白い手をこちらに伸ばしていた。気付くのが遅れていたら、赤く濡れた髪に触れられるところだ。
「……もっと」
ひらひら手を振って近づけと命じる国王へ、ウィリアムは腰に手を当てて呆れ顔を作った。
「どうして血に触れたがるんですか」
口調が少し砕けている。本心から呆れたと示すが、エリヤは首を傾げた。
「拭いてやろう、だから来い」
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