4-5.返り血なんて大失態

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 突き立ててしまえば抜くのに時間がかかる。肩から腹部まで切り裂いて動けなくし、次のターゲットへ踏み込んだ。身を捩った男の首を一撃で落とす。転がる頭部を追う形で血が噴出(ふきだ)した。 「やっちまった」  ミスしたと舌打ちしたのは、返り血を浴びたからだ。最前線ならば問題ないが、この後も国王であるエリヤに随伴(ずいはん)する身として、血に染まっているのは考え物だった。  まあ、すでに浴びてしまったものは仕方ない。溜め息をついて剣を一振りして血を落とす。軽く拭って鞘に収めた。 「お待たせいたしました」  親衛隊の手前、膝をついて賊の討伐完了を報告する。愛馬の上に残した主は、子供らしい仕草で立ち上がるよう命じた。 「ご苦労。こちらへ」 「はっ」  素直に近づくが、ふと気付いて足を止める。案の定、エリヤは白い手をこちらに伸ばしていた。気付くのが遅れていたら、赤く濡れた髪に触れられるところだ。 「……もっと」  ひらひら手を振って近づけと命じる国王へ、ウィリアムは腰に手を当てて呆れ顔を作った。 「どうして血に触れたがるんですか」  口調が少し砕けている。本心から呆れたと示すが、エリヤは首を傾げた。 「拭いてやろう、だから来い」     
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