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4-2.ちょっと我が侭を言ってみたくて
国王を補佐する優秀な執政、攻め込まれた国の危機を救った騎士であり英雄、文武両道の彼にとって誰でも選べただろう。
選り取り見取りの立場で、それでも彼は必ず俺を優先してくれる。国王だからではなく、エリヤという個人を見てくれるのだ。亡き父母であり、兄であり、導く師でもあり、唯一の半身で恋人。
絶対の存在があるから、エリヤは揺るがない。
「では行きましょうか」
愛馬の鼻先を撫でてから、小柄なエリヤを先に乗せる。その後ろへ慣れた様子で飛び乗ったウィリアムは、ゆっくりと馬を歩かせた。
かつてエリヤが下賜した馬は、漆黒の美しい毛並みを誇る。目の間から流星と呼ばれる美しい白い模様が入っていた。すっと真っ直ぐな流星が、黒毛の顔を引き締める。
駿馬の産地から献上された黒馬を見た瞬間、エリヤはウィリアムを思い浮かべたのだ。彼ならば似合う、と。だから迷いもなく、その場で下賜を決めた。
「リアンに乗るのは久しぶりだ」
嬉しそうに馬を撫でるエリヤは、馬の揺れに合わせて身体を揺らしていた。
小柄な子供が1人増えても、馬は負担に感じていないようだ。四本の足の動きに乱れはなかった。
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