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4-3.淑女という言葉は似合わない
昨夜、国王エリヤが寝室と定めた部屋から、『痴女』呼ばわりして、子爵令嬢を放り出したのはウィリアムだった。
国王は常に侍従を兼ねるウィリアムを隣に置く。それは寝室も例外ではなく、恋人だからこそ一緒に眠るのが当然だと考える。
大国を治める王は一人で眠れない――国家機密並みの情報だ。
湯浴み後のほんのり頬を染めた恋人に寝着を着せて抱きかかえ、湯冷めさせないよう毛布で包んだところにあの女は入ってきた。ノックすらなく、下着同然の姿で忍び込む。入り口を守る衛兵に見つからぬよう、バルコニーを歩いてきたのだろう。
ベッドに王を置いたまま、ウィリアムは無言で剣を抜いた。城の中では帯剣すらしないが、親衛隊を鍛えた腕の持ち主は最愛の主に微笑を向け、振り返りざま侵入者の首に刃を突きつける。
間抜けな悲鳴をあげた彼女を、護衛で連れてきた親衛隊に引き渡した。この館の衛兵に渡せば、きっと事件をなかったことにされてしまう。
王の寝室に忍び込む――夜這いが目的か。幼い少年王相手ならば、その命を狙った可能性も否定できない。場合によっては、スガロシア子爵家による謀反の疑いもあった。
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