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4-1.穏やかな休息がはじまり
涼やかな風が吹き抜ける。心地よい日差しを浴びながら、少年は大きく伸びをした。 艶のある黒髪を風が揺らしていく。
「陛下、あと少しですので……」
遠回しに馬車に戻ってくれと促す青年の声に、国内最高の肩書きを持つ子供は頷く。
「わかった」
シュミレ国、北の山脈が背を守り、南の海が恵みを運ぶ大国。この国で采配を振るう王は、わずか15歳という若さだった。
本来なら王子として親に守られる年齢だ。12歳で両親を暗殺された彼にとって、一番身近な家族は執政であるウィリアムだった。
従兄弟同士でありながら、国王となった少年エリヤと禁忌の存在であったウィリアムの生い立ちは全く違い、接点はなかった。
偶然見つけた古い資料に興味を持ったエリヤがウィリアムを見つけださなければ、この国はもっと寂れていたかも知れない。優秀な手腕を誇る宰相ウィリアムが起案した政策は、この国を旱魃の危機から救い、戦争孤児である子供達の未来を開いた。
全体を判断して動かすエリヤ、王の意見を通すために詳細を詰めるウィリアム。どちらが欠けても、今のシュミレ国は存在しなかっただろう。
「……疲れた」
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