4-5.返り血なんて大失態

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4-5.返り血なんて大失態

 彼らの剣は傭兵ごときが入手できる安物ではなかった。少なくとも正規兵がもつ剣に近い。また彼らの構えも正規兵の動きだった。スガロシア子爵に仕えた兵が主の命令に逆らえずに襲撃を試みた、そう考えるに十分な状況証拠だ。  だから生かしておこうと思ったが……彼らが破滅を選ぶなら仕方ない。どうせ彼らの装備や出身地、様々な情報から主犯は絞られる。無理に生かす必要はないだろう。  免罪符のように理由をかざし、ウィリアムは笑みを浮かべた。背筋が寒くなるような笑みが黒く表情を彩る。直後、彼の身体は流れるように動いた。  本来両手で扱う剣を右手のみで構え、左手で腰の短剣を抜く。踏み出した足が一気に距離を縮め、左側から振り下ろされた剣を短剣で弾いた。たたらを踏んだ男の腹部に剣を振り下ろす。  正規兵と違う金属製ではなく革の鎧は、鮮やかに切れた。革であっても鎧として作られた以上、最低限の強度は持っている。それを紙のように切り裂く技量は、ウィリアムが独自に鍛えた結果だった。     
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