第一話 立ち切れ

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(やはり、この街の空気はどこか懐かしさがある。そのせいか)  裏口から出た路地は人通りも少なく、アラディアは次の店へと歩を進める。  ――かあ、かあ  ふいに、カラスが鳴き声をあげた。 「ひゃ、ひゃああ」  転んだような物音。アラディアがそちらに顔を向けると、カラスに驚かされて尻もちをついている者がいる。赤い髪を切りそろえた、まだあどけない少女であった。  ――かあ  アラディアが視線を向けると、カラスは羽ばたいていく。 「災難でしたね。身体は平気ですか?」 「は、はい、なんともありません」 「しかし、カラスの鳴き声にどうしてそれほど驚いたのですか」 「あ、いえ、あなたに話しかけようとしていて」 「……その割には遠かったですが」 「あの、声をかけようかどうしようか迷ううちに歩き出されていたので」  少女は立ち上がって土を落とすと、改めて言う。 「あの、すいません。あなたはメオロ酒造の人ですか」  同じ目線で見てみると身ぎれいにしており、ほんのりと香がかおった。 「私は出入りの薬屋に過ぎません」 「あのあの、あちらの若旦那さまのこと、なにか聞きませんでしたか」 「失礼ながら、あなたは?」 「あ、すいません。ラティです」 「……どちらのラティさんでしょうか」     
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