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「薬というものはあくまで補助。本人に生きる気が無ければ効くものも効きません」
「あのあのあの」
「あなたはなぜ、そう懸命になられるのです。本人が選んだことではありませんか」
「だって、これではクー姐があんまりにかわいそうです」
「世にかわいそうな方はたくさんおります」
「でも、あの、だって……」
言葉は弱弱しくなりながら、それでもアラディアの裾をしっかりと掴んでいた。
「クー姐は、こんなわたしを救ってくれた人だから」
アラディアは裾を掴む指にため息をつく。
「お願いします。わたしにできることならなんでもしますから、どうか」
「なんでもなどと、軽々しく言ってはいけません」
「軽々しくなんて、わたし、本気です」
「ならば彼女のために死ねと言われれば死にますか」
「それは……」
「御覧なさい。余計なお世話などやめておくことです」
「死ねますっ」
声が部屋に響いて、それからしんと静かになった。
置屋の女将が喧しいと叱りに来ることもない。アラディアは細いパイプを取り出すと一服つける。あたりに香草のにおいがふわりと広がっていった。
「死ねると言われましたか」
座り直して、アラディアはラティを見た。
「それほどにおっしゃるのであれば、手立てが一つもない、ということもない」
「ほ、ほんとうですか」
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