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クーロ自身から聞いたことはなく、女将が時々そんな話をする。
『芸は好き。お琴を弾いていると、すべてが忘れられる気がするもの』
ラティ自身は、身売りされた身の上である。
父親がギャンブルで作った借金、その返済をするために売られた。それも格安だった。赤毛で、痩せぎすで、しかも幼い。とてもではないが娼婦として稼ぐことはできそうにない。かといって読み書きもできず物覚えも悪く、他に役立ちそうなこともない。
十ゴールドで買いたたかれた。
相場の半額。人の値段としてはあまりに安い。
おめえは役に立たねえな、というのが父親からの最後の言葉だった。
『あたしが仕込みますから、ここへ置いてあげてください。ね、母さん』
母さんというのは、女将のことだ。
置屋ノルンではそう言った。あちこち回された挙句にたどり着いたのがこの店で、ラティはここでクーロに出会った。何が気に入ったのか、クーロはラティを傍に置いた。
叩かれたことは一度もない。
叱られたのは、自分はバカだから愚図だからと卑下したときだけ。
少しでも物を覚えると褒められた。
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