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「さようですか。それは、かたじけない。いずれ必ず」
「はい、いずれ」
「ところで、聞いてよいものであればだが、その顔はどうなされた」
「顔? ……ああ、これですか」
薬屋の顔は布で覆われており、琥珀色の瞳だけが表に出ていた。
「業病というもので、少し顔が崩れております。お見苦しいものですから」
「モアグレン郷の患っていたというあれですか」
「はい。しかしご心配なく、感染する類のものではありません」
乗合馬車がアーチをくぐり、長い橋を馬蹄がカッポカッポと音を鳴らす。運河の栄えるエドモントンの街並みは橋が多く、橋の下を小舟がいくつも行きかっている。
川沿いにはプラムの花が咲いており、その白い花弁が水面に映る様は見事で馬車の乗客たちは首を伸ばし、子供などがはしゃぎだしたせいで馬車が揺れた。
「薬代も払えぬと見下されたくはないですが、僕にもいろいろと事情がありまして」
「ほんとうに、いつでも構いません。あなたは出世なさる」
「なぜわかります」
「そういう相が出ています」
「占いもされるのか」
「いえ、ただ私は、そういうものが見えるのです」
琥珀色の瞳は、春の日の加減か蝋燭の火のように揺らめいて見える。
「さようですか」
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