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第一話 立ち切れ
「以前より、だいぶお若いようだが」
クーパ橋に面するメオロ酒造の奥で、アラディアは置き薬を補充している。
「以前のものが急に体調を崩しましたので、私がしばらく代わりに」
「そうですか。そうそう、この薬だが、旦那様がよく効くと気に入っておられて」
「少し多めに入れておきましょう。ええ、では今回のお値段でございますが……」
花浅葱の旅装に黒い羽織、顔を布で覆った姿は奇妙である。
最初こそ怪しんで、店を任されている番頭が目を光らせていたものの行李から出てくる薬が以前と変わりないのを見ると、安心したようでお茶も出してくれた。
「若い女性が遠くから商いとは、いや、偉い」
「最近は道も整備されておりますから、何事も陛下の御威光の賜物でございます」
「それにしたって危ないこともあるだろうに。そこを頑張る料簡がうちの……」
言い淀んで、番頭はパイプを吸う。
アラディアは代金を懐に入れると、出された茶を口に含んだ。かすかだがスモーキーな風味があり、庶民にはなかなか買えない本場の茶葉が混ぜられているようである。
半端な大きさの店ではこうはいくまい。
「……なにか、お悩みがございますか」
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