第一話 立ち切れ

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 このメオロ酒造は大店であり、エドモントン市内外に支店がいくつもある。 「なぜそう思われる」 「いいえ、なければよいのです。それでは失礼を」 「いや、ま、焦らず。お急ぎでもないでしょう」 「急いではおりませんが、次のお店もあるものですから」  店を任されている番頭も暇ではない。 「たとえばですがね、常備薬のほかにも薬はあるもんですか」 「色々とありますが、なにがご入用でしょう」 「気を静める薬……などは、ありますかな」 「ないことはないですが、処方の難しい薬も多い。どんな患者でしょう」 「いや、ま、誰と言って、うん……誰ということでもないのですが」 「では薬などいらないでしょう」 「い、いや、誰ということもあるんですがな」 「誰でしょうか」 「うーん……まあ、誰ってことはないんですが」 「どっちです」  番頭は飲み干しかけていたアラディアのカップに茶を注ぐ。 「えー、そうだ、これは近所のお話なんですがな」 「近所のお話ですか」 「そのお店では若旦那がやらかしまして、まあ旦那様も一人息子だけに悩まれたようで」 「なにをしました」 「店の金を使ったと聞きます。女に入れ込んだとか。おとなしい方ほど一度入れ込むと」 「近所のお話ですね」 「もちろん。それでまあ一族で話し合って、サメに食わせようということで」     
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