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「食わせましたか」
「いやさすがに可哀そうだと言って別の旦那さんが炭焼き小屋で死ぬまで働かせようと」
「では、小屋に」
「それも無体だというので、まあ乞食に身をやつしてお金の有難みを知ってもらおうと」
「……乞食になられましたか」
「なるところを、本人がどうしてもと嫌がるので空いている蔵に閉じ込めてるところで」
「近所のお話ですね」
「ええ、そう聞いてます」
この店の蔵のあたりから何やら騒ぐような物音が聞こえてくる。
「ご当家ではない」
「もちろん」
真面目な顔で番頭は頷く。
「……しかし、そういう事情であれば躾が目的であり薬など」
「まあまあまあ、その通りなんですが『クーロに言伝だけでも』と騒がれまして」
「クーロとは?」
「件の女です。蔵に入っても女とやりとりされては謹慎の意味がない」
「そのクーロという方からはどうなのです」
「毎日手紙は届いておりますが、まあ芸者は、恋は恋でも金持ってこいと言いますし」
「恋煩いですか。つける薬など……」
「百日もすれば旦那様もお許しになるでしょうから一時落ち着けばよいので、なにか」
「いまは、何日目で」
「八十日になりますかな。はじめはしばらくすれば落ち着くと思いましたが」
「そんなにですか」
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