既視感

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既視感

午前中の診察を終えた私が医務室でくつろでいると、看護婦がコーヒーを持ってきてくれた。 「お疲れ様です」 「ああ。ありがとう」 猫舌な私は何度も息を吹きかけると、コーヒーのいい匂いが鼻孔をくすぐる。 「ふぅ。うまい」 「ふふ。入れ方にコツがあるんですよ」 お盆を小脇に抱えながら微笑む看護婦を見ると、「もし私に妻子がいなければ・・・」なんて禁断の妄想が膨らんでしまう。 「最近、患者さん多いですよね」 「寒くなって来たからね」 「そうですよね・・・って、あれ?先日は、寒さと風邪に関係性は無いとおっしゃってませんでした?」 「それは直接的にって意味さ。寒いと家からでなくなるだろう?そうするとウイルスへの免疫力が無くなって風邪をひきやすくなるんだよ」 「ああ。そういうことでしたか。お代わりいります?」 「いや。大丈夫だよ」 いい子を雇ったものだ。 私は自分の裁量の良さを再認識していると、受付のベルが鳴が鳴ったらしい。 看護婦が私に誰か来たことを告げた。 「ベルなっちゃいましたね・・・。どうします?まだ一時前ですけど・・・」 「一息付けたしいいよ。受け入れしてあげて」     
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