0人が本棚に入れています
本棚に追加
幼少期
私が生まれたのは、予定日より8日も後だったと聞きました。
生まれてからはお腹がすいたら泣いて知らせ、あとは勝手に遊んで気がつけば寝ている…と、あまり手のかからない子供だったそうです。
私の上には兄がいて、父と母、そして父方の祖父母と暮らしていました。
小さな頃の私は、本当に何も知りませんでした。
さらに言うなら、ついこの前まで何も知りませんでした。
母の苦しみを。
母方の祖父母の怒りを。
自分は本当に生まれてきてよかったのかを。
結論から言うと、母は離婚しました。
今でも覚えているのは、夜の出来事。
部屋で私と母の2人きり。
母は無表情で言います。
「もし、お父さんとお母さん、どっちかと一緒ならどっちがいい?」
私は聞きました。
「お兄ちゃんは?」
母は少し悲しそうな顔で
「お兄ちゃんはお父さんと一緒がいいんだって。」
その頃よく喧嘩をしていた2歳上の兄。
幼いながらも何かを感じたのか、私は心のどこかに詰まりを感じながら答えたのを覚えています。
「お兄ちゃんがお父さんなら、私はお母さんと一緒がいい!!だってお兄ちゃんいじわるするんだもん!」
今となっては、この答えは母にとっては辛いものだったのかもしれないと思います。
母は少し涙を流しながら、言いました。
「そっか。よし、じゃあこれからお母さんの方のおじいちゃんおばあちゃんのお家にお出かけしよっか!」
そして、私と母は家を出ました。
夜の道路、母の隣で助手席に座り街灯を眺めました。幼い私は時間も遅かったのかだんだん眠くなり、オレンジ色の街灯を見ながら眠り、気がつけば祖父母の家…つまり、母の実家にいました。
うつらうつらと半分夢の中の私を祖父は抱き上げ、布団へと連れて行こうとします。
そのとき母が祖母に抱きしめられ、泣いていたことを私は今でも忘れられません。
あの母の涙の意味を、当時の小さな私は知ることはありませんでした。
最初のコメントを投稿しよう!