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私の本当の父が保育園の先生と不倫していたと知ったのは、随分後になってからでした。
母は鬱気味になって帰ってきたと聞きました。
その理由が、不倫だけではなく、私と兄の親権についてだったそうです。
兄はうちの跡取りだから、絶対に渡さない。私はどうでもいいと、父方の祖父母に言われたそうです。
私自身、幼いながらあちらの祖父母には好かれていないだろうなということは気づいていました。
何をしても褒められるのは兄ばかり。
私は兄ほど褒められることもなく、唯一まだ記憶に残っているのは冬場に祖母がストーブの前で編み物をしていたこと。
その横を怒られないようにと息を殺して静かに通り過ぎたことだけです。
なぜそのようなことをしたのか、今では覚えていませんが、相当緊張していたのだけは鮮明に覚えています。
普段からそんな扱いだった私ですから、父方の祖父母があの子はどうでもいいと言ったことにも納得がいきます。
かわいい跡取りである兄は大切にされ、女の私は遅かれ早かれ、いずれ嫁に行ってしまえば他人の子。
兄は渡さないという強い意志を、あちらはお持ちだったのでしょう。
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