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そしてこれはつい最近、私が21歳になって初めて知ったことなのですが、母と私が母方の祖父母宅に戻った数週間後、父方の祖父が兄を連れて母のもとへ来たそうです。
兄が母がいないのが嫌だと、毎日泣いていると。
その時のことを私は覚えていませんが、私を保育園に送って仕事に行こうとしていた時だったそうで、
母は
「私は忙しい。早くおじいちゃんと一緒にお父さんのことろへ帰って」
といったそうです。
出ていく車を見送らず、母はさっさと家の中へ。
祖母が見送って家に入ると母は泣いていたそうです。
それもそのはず。
大好きな息子を、自分がいないと嫌だと毎日泣いている愛しい息子を、父にとられ、離婚したというのに、今更兄を引き留めることなどできなかったのです。
冷たい言い方をした、母親なのにと泣く母は、やはり私と兄の二人の母でして、1人でもいなくなってしまうというのはとても耐えられなかったと思います。
それでも私たちの母は、やっぱり母親であって、私の前で涙を見せることはありませんでした。
どれだけしんどくても、悲しくても、彼女は1人の女性として、また1人の母親として、強く私を育ててきてくれました。
それからしばらくして、母と私は祖父母の家を出て二人で暮らすようになりました。
それも県外で。
今思うと父や兄から少しでも遠くに行きたかったのではないかとも思います。
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