0人が本棚に入れています
本棚に追加
話を始めながら、猫は蜻蛉の長い三つ編みを掴み、その手を引く。蜻蛉は否応なく頭を反らせ、無防備な細い首筋に煌々としたナイフが添えられた。
「まずはね、感心したんだよ。あんたはものすごくマトモなんだ。ちょっとしか話してないけど、言葉遣いは丁寧だし、あんたのことを調べた犬は、その年できちんと自立した生活を送ってるって褒めてたよ。服装もちゃんとしてるし、良いにおいがする。変な意味じゃないぞ、シャンプーだかリンスだか使ってる洗剤だかは知らないけど、そういう良いにおい」
猫がナイフをついと動かす。蜻蛉の首から、耳の付け根へ。
「ホント、まったくもって清潔で、殺しなんて汚いことには不似合いだ」
耳を削がれる。
蜻蛉は反射的に硬直する。
「なあ、だからお終いにしよう」
直後、ナイフが動いた。
【6】了
最初のコメントを投稿しよう!