君の隣で僕は書く。

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 最初の1行を綴った日から、どれだけの歳月が経っただろうか。  『君』の隣で『僕』は書き続け、  書き続け、  書き続け、  しかし最後まで書き続けることはできなかった1冊の本。  『君』が笑い、『君』がけなし、『君』が関心したいくつかの、稚拙な、まとまりのない文章群。  それは、つちのこだったり。  あるいは、怪談だったり。  または、運命の糸だったり。  時には、赤い糸だったり。  もしくは、図書室だったり。  さらには、校内全域だったり。  はたまた、小さな人形だったり。  そして、繰り返される日常のほんの一日だったり。  日常のカケラのような物語。   つまりは閑話――   ――あるいは挿話  そんな拙い物語達。  未完成な作品たち。  読み返す毎に恥ずかしさを感じていたあの頃の感情も今では懐かしく、思い浮かぶものは、長い歳月で色あせた、日焼けして茶けたページのような、古臭い思い出ばかり。  きっと文面からは読者には伝わらないであろう個人的な感傷。  受け取った『君』があの日に見せた笑顔の残滓。日々の名残。青春の残り香。  ーーそんな言葉で飾ろうとも思ったが、それすらも遠い日々の記憶に埋め尽くされ、よくは思い出せない。本当に笑顔だっただろうか、なんて疑問すら覚える。  それほどまでに、年月が経ってしまったのだろう。  その物語を『君』の隣で書き始めてから。
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