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書き始めは何気ない一文。
教師の話をメモするふりをしながら綴った、意味不明な一行。
なぜそれを書いたのかは自分でもよくわからない。きっと退屈だったのだろう。
そして同じように退屈そうな顔をしながらそれを覗き込んだ『君』が盛大に吹き出し、教師のするどい視線に気持ちのこもらぬ謝罪を述べた後、舌の根も乾かぬうちに言った一言。
「続きは?」
その言葉は『僕』にとってページをめくる指であり、筆を走らせるペンになった。
『君』が続きを促す毎に『僕』は文字を書き連ね、やがてそれは一つの物語の型枠となり、肉をつけ、足を以て白紙だったページに軌跡を残した。
学生がノリと勢いで書いたものらしい、とても素晴らしい拙さだった。
そしてそれで『僕』らは満足だった。完璧も完成すらも求めてはいない。『僕』らにはそれで十分だったのだ。
ページは増え続けた。
終わりが来るまで増え続けた。
けれどその終わりは来なかった――
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