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11月の初旬。マンションのエレベーターから見える、人工的な夕日に、少女は安堵のため息をついた。2602と書かれたルームプレートを確認して、リンは部屋の中へ入っていった。
暗い廊下の先にあるリビングに着くと、木製の古ぼけた丸テーブルの上に、その日の報酬を広げる。
紙幣は束にして30束、金貨200枚、銀貨160枚、銅貨60枚。
「兄ちゃんが見たらびっくりするだろうな」
そんなことを呟くと、少女はウィンドウを出現させる。
リンというプレイヤー名と、ギルド各種の銀行アイコンが表示される。
『いらっしゃいませ。ご用件をどうぞ』
「預金をしたいのだけど、今の時間、まだ大丈夫?」
『畏まりました。お好きなだけ、入れちゃってください』
リンは頷くと、テーブルの上の金貨や紙幣を手で救い上げてはウィンドウの中へ入れていく。
「これで今日の分は全部よ」
『ご利用、ありがとうございます』
ウィンドウが閉じられると、リンはホッとして、また別のウィンドウを開く。
――預金は済んだし、帰るか。
リンはウィンドウに署名すると、その場から電子の光粒となって消えた。
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