第1章 最上凛の誕生日

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遡ること約1日前。 リンこと最上凛(もがみ りん)は、SNSの無料通話機能を媒介に朝の挨拶をした。 「おはよう、凛」 「おはよう、お兄ちゃん」 今日は久々に兄妹二人きりで出かける日だ。凛は今日が自分の誕生日であることをわかっているため、前夜からとても楽しみにしていたのである。 凛の最新機種のノートパソコンの画面右下の時計は、午前10時を過ぎていた。 「11時になったら玄関で待ち合わせってことで。あまり遅れんなよ、凛」 「わかってるって! 11時ね」 凛は充電済みの携帯からコードを放し、同じく充電満タンの充電器をコードから放し、机下の引き出し一段目から携行用コードを取り出し、携帯から外出時携行用コードを並べる。 次に、洋服を選ぶ。――といっても、外に着ていく服はだいたい決まっている。長袖の襟付きのシャツの上に蛍光色のパーカーを着、更にダッフルコートを羽織る。下はチョコレートブラウンとベージュのチェック柄の丈の長めのズボンを穿いている。 メイクは、ナチュラルメイク。 机の上の必需品三点をさらっと掬い上げるように持ち、それらをポシェットに仕舞い込む。 ≪先に玄関で待ってるよ~≫ 玄関に着いた凛がSNSのチャットで兄に伝える。 兄はすぐに階段を下りてきた。 「早いな、凛。忘れ物は無いか? 大丈夫か?」 「ないよ、兄ちゃん。早く行こっ」
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