第1章 最上凛の誕生日

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 家電量販店のゲームコーナーに入ると、凛はあるゲームソフトの前で立ち止まり、そのソフトを指さす。 「兄ちゃん、あたし、これやりたいなぁ」  隣にいる兄・(ゆう)が、黒のセルフレーム眼鏡の縁を上げて、ゲームソフトの文字列に顔を近づける。  数秒間、小声でソフトに書かれた説明書きを音読すると、凛のほうをちらと見た。 「俺、これやったことあるわ」 「マジで!? 超安心感! ますますやりたくなってきた!」 「凛ぐらいなら、適職は……マジックコールだな」 いまだかつて聴いたことのないジョブ名だけに、凛の好奇心ボルテージは最高潮に。 「マジックコール?! え、何それ。聴いたことないし多分やったことないやりたいやりたいやりたーいっ」 「ふっ、愛しの妹よ。遂に己の未知なる領域エックスへ繋がる扉を開くのだな?」 「お兄ちゃんの痛い厨二病語は良いから。あたし、これが良い」 「……少しは兄の遊戯に付き合ってくれてもいいのに」 レジで精算し、いざ持ち帰る。  勇と一緒にタクシーに乗り、自宅前で降りると、凛は運転手に礼を言って先に家の中へ入っていった。 机のキーボード前に例のソフトが入っている箱を置き、とりあえず説明書きをみる。 推奨環境が合っているか、キャラメイクはどこまでできるのか、初期ジョブの種類は……。 一通り確認が済めば、いざ、開封! 接続あるのみである。 中に入っていた説明書通りにソフトをインストール。
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