3月

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「あら、気が付いた?」 「ここは…」 「月乃ちゃんと、仲、良かったの…?」 養護教諭のやまちゃん…だったか。優しいと評判で、名前だけは聞いたことがある。が、そっと紅茶を入れながら、まるで世間話のように、なんでもないように、問いかけてきた。 「……はい」 「…そう」 少し悲しそうに微笑んで、そっと紅茶の入ったカップを差し出してくる。受け取った私は、それをひとくち飲んだ。 「…おいしい」 保健室でこんな美味しい紅茶を飲んでいいのだろうか。 「それね、月乃ちゃんが好きだった紅茶なの」 「……え」 どうしてこんなところで月乃の好きな紅茶が出てくるのか、わからない。 「月乃ちゃん、よくここに来て、紅茶を飲みながら日向ちゃんの話をしていたの」 「…」 「もう、こんなところで油売ってないで教室に行きなさいって、やりとりをよくしていたわ」 一呼吸おいて、やまちゃんは視線を私の持っているカップに落とした。 「いじめられていたんですって」 「…え」 「3年生になってから、クラスに馴染めなくて、気が付いたら、いじめられるようになったんだって」 「……………う、そ」 「ずっとここに入り浸っていたのに、最近来なくなったと思ったら…。来なくなったと思った、その矢先に…」 やまちゃんは、泣いていた。
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