0人が本棚に入れています
本棚に追加
「あら、気が付いた?」
「ここは…」
「月乃ちゃんと、仲、良かったの…?」
養護教諭のやまちゃん…だったか。優しいと評判で、名前だけは聞いたことがある。が、そっと紅茶を入れながら、まるで世間話のように、なんでもないように、問いかけてきた。
「……はい」
「…そう」
少し悲しそうに微笑んで、そっと紅茶の入ったカップを差し出してくる。受け取った私は、それをひとくち飲んだ。
「…おいしい」
保健室でこんな美味しい紅茶を飲んでいいのだろうか。
「それね、月乃ちゃんが好きだった紅茶なの」
「……え」
どうしてこんなところで月乃の好きな紅茶が出てくるのか、わからない。
「月乃ちゃん、よくここに来て、紅茶を飲みながら日向ちゃんの話をしていたの」
「…」
「もう、こんなところで油売ってないで教室に行きなさいって、やりとりをよくしていたわ」
一呼吸おいて、やまちゃんは視線を私の持っているカップに落とした。
「いじめられていたんですって」
「…え」
「3年生になってから、クラスに馴染めなくて、気が付いたら、いじめられるようになったんだって」
「……………う、そ」
「ずっとここに入り浸っていたのに、最近来なくなったと思ったら…。来なくなったと思った、その矢先に…」
やまちゃんは、泣いていた。
最初のコメントを投稿しよう!