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「…どうして」
「…え?」
「…どうして、せんせいが泣くの」
やまちゃんは、涙で濡れたまつげをしばたたかせた。それから、
「…だって、私がなんとかできたかもしれないのに。私が、もっと上手に話を聞けていれば。もっといい提案をしていれば。そうすれば、こんなことには…。ごめんなさい、日向ちゃん。わたしが、わたしが、あなたの大切なおともだちを……っ」
いい先生だと思った。養護教諭らしい優しい、いい先生だと思った。他の教師たちが厳しい分、こういったところは優しすぎるくらいでいいのだ。
けれど、今の私にとって、その優しさは逆効果だった。
ごめんね、ごめんね、と泣きじゃくるやまちゃんを、ただただ眺めることしかできない私は、そういえばまだ泣いていなかったな、ということに気が付いた。
「………っ」
気が付いたら、止まらなかった。悲しむやまちゃんを見て、苦しむやまちゃんを見て、何か蓋をしていたものが消えて、ただただ涙が止まらなかった。
泣いたのはいつぶりだっただろう。後から後から涙が出てきて、子供みたいに、泣き喚いた。
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