4月

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4月

それから、しばらく。 4月。私は無事大学生になりました。 今日は入学式だった。天気は快晴。所々に雲があるけれど、私は雲一つない快晴よりも、まだらに雲がある方が好きだ。一点の汚れもない純白よりも、ちょっと使い古されたおばあちゃんの着物の方が、親しみやすいような、そんな感覚。 そっと、空を見上げる。 あの日、月乃が何を思って空を飛んだのか、私にはまだわからない。もっとたくさん話せば良かった。もっと関わろうとすれば良かった。もっと、もっと。 月乃とは仲が良かったけれど、多くを知っているわけではなかった。月乃の痛み、苦しみ、悩み。私は、何一つ知らない。 あの日から、ずっと何かが足りない。 高校では新しい友達もできた。人並みに楽しかったとも思う。けれど、それでも。やっぱり何かが欠けていると思う。ふとした瞬間に、月乃を探している自分がいる。街ですれ違ったブラウン系の長い髪に、思わず振り返って、人混みの中に消えてゆくその後ろ姿に、落胆している自分がいる。 きっとこれは、この先もずっと続いていくんだろう。ずっと何かが足りないまま、泣きじゃくる私を胸の内に秘めたまま、みんな大人になっていく。 でも、それでも、生きなければいけない。 月乃が好きだという紅茶。それを教えてもらってから、お店を探した。やまちゃんもまだ、飲んでいるのだろうか。 今、私が持っている紙袋の中にも、その紅茶がある。ちょうど茶葉を切らしてしまって、ついでだから、入学式の帰りに買ってきたのだ。 家に帰ったら、これを飲もう。 ほんのちょっとのお砂糖と、ミルクを混ぜて、これを飲もう。うん、そうしよう。 目を閉じて、空から視線を外す。きっとまた、何度もこの空を見上げることになるだろう。晴れの日も、雨の日も、雪の日も、曇りの日も。 だから、今は家に帰って、買ってきたばかりのこの紅茶を飲もう。 目を開けた私は、ゆっくりと、でも着実に歩き出していた。 『just alive(ただ、生きていて)』柘榴の風味をプラスした、甘酸っぱいフレーバーを堪能できるひとしな。そのままでも、お好みでお砂糖を入れても、美味しく頂けます。
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