3月

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そういえば、連絡先を聞いていなかったな、という事に今更気が付いた。互いに、何となく学校で顔を合わせて、何となく一緒に過ごしていた。休日に遊ぶときは、決まって土曜日。金曜日、学校で集合場所と時間を決めて、じゃあまた明日、というのが恒例だった。それで十分だったのだ。わざわざメールでやりとりしたり、電話をしたりする必要性を感じなかった。 だから、こうしてクラスが別々になってようやく、私は月乃の連絡先を知らない事に気がついたのだ。 まあ、受験を控えたこの時期に、呑気に遊べるかと問われれば、そんなことはなく。それはきっと月乃も同じだろうと考えて、私は一旦勉強に集中しようと決めた。授業も、これまでよりも真面目に耳を傾け、家に帰ったら参考書とにらめっこをする。 どうしても行きたい高校があるわけではなかった。けれど、高校卒業までの最終学歴は、最低限、この日本という小さな国で生きていくには必要なのではないかと思えた。いや、必要、ではないかもしれない。けれど、なるべく楽に生きるには、それくらいの学歴があったほうがいいだろう。親に勧められるまま、姉と同じ高校を受験する事にした。 朝起きて、制服に着替えて、学校へ行き、勉強し、帰ってからまた勉強して寝る。それの繰り返しだった。何日も何日も何日も、まるでロボットか何かのようだと思った。 無性に、月乃に会いたくなった。
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