3月

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夏。もう少しで、長い休みが始まろうとしている。先生たちは口を揃えて、この夏にどこまでできるかが勝負だという。もう耳にタコができるほど、いろんな先生から同じ言葉を聞いた。 正直、うんざりしていた。 日々焼き付けるような日差しに変わっていく太陽を恨めしく思うように、勉強漬けの生活に、飽き飽きしていた。 だから、だろうか。月乃を探すようになった。休み時間のたびに、廊下に出ては、もう見慣れたふわふわした髪を探す。きっと、生徒で溢れかえっているこの廊下であっても、見つけることは容易いだろう。それほどまでに、月乃には存在感があった。けれど、私の期待とは裏腹に、月乃を見つけることはとうとうできなかった。 そして、月乃は空を飛んだ。
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