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月乃は、空を飛んだ。
初めて会ったその日に、空を飛びたいと言っていた彼女は、果たして本当に空を飛んでしまった。
最初に月乃を見つけたのは、学校の鍵を開けに来た先生だった。救急車がきて、警察も来て、大変な大騒ぎだったと聞く。その日の学校は、休校になった。
私たちがそれを知ったのは、月乃が空を飛んでから一週間経った頃だった。
前触れもなく全校集会が開かれ、校長が壇上で、テンプレートのようなスピーチをしている間、私はただただ混乱していた。
黙祷!という短い掛け声が、私の意識を無理やり現実に連れ戻す。先生も、生徒も、皆が目を閉じて、月乃の冥福を祈っていた。果たしてそこに心があるのかないのかは私にはわからない。
教室に戻ってからは、何事もなかったかのように授業が進められた。
さっきのは夢だったんじゃないかとさえ、思えてくる。もしかしたら、ひょっこり、あのふわふわの髪を光に煌めかせてやってくるんじゃないかと。
ついに、月乃の教室を覗いてみたりもした。
月乃の机の上には、花が飾られていた。どうしてそんなことをするの、まるで月乃が本当に死んじゃったみたいじゃないかと思う自分と、ああやっぱり、月乃はもういないんだ。と思う自分とがせめぎ合って、くらくらした。
くらくらして、うまく立っていられなくなって、気がついたら、保健室にいた。
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