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「ま、まじですか…。すみません!道がわからないのですが!」 「やっぱりですか、地図は持っていますか?手短に教えますので一回で覚えてください」 なんて優しくて頼りになる良い人なんだ!僕は背負っていたリュックから急いで事前にもらっていた地図を出して広げる。 「現在地がここ、そして学校がここ、そして道順がですね」 吉野さんが丁寧に指を差して、教えてくれた。よし、覚えたぞ多分。 「わかりました!もう八時だ。そろそろ行きます。いろいろと教えていただいて本当にありがとうございました!!」 再度、僕は吉野さんに会釈をする。前より深く。足踏みしながらなのは許して下さい。 「はい。それでは遅刻しないように頑張ってください。いってらっしゃい」 「行ってきます!」 その後、僕はすっ転ぶ。それは吉野さんに行ってきますと言ってから数秒後のことであった。 「大丈夫ですかー」 少し遠くで吉野さんが心配している。 かっこわるくて、涙が滲みそうになった。嘘。ちょっと涙出た。 僕は無言で立ち上がり、颯爽とその場をあとにするのだった。 ーーーーーーーーーーーーー区切りだよーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー しばらくしてからだった。 「すみませーん!誰かー助けて下さーい!」 どこかで困っているような声が聞こえた。声質からして女の子。でも僕は正義の味方ではないから今回は助けられない。自分のことで精一杯です。 急に止まったらまた転びそうなんです。勘弁してください。 時刻は八時五分。吉野さんから教えてもらった道順でいうと、中盤にさしかかっていた。 ここ数年、全力疾走なんてしてなかったから気が付かなかったが、案外自分は足が速いかったんだなあ。 それにしてもわざわざこんな林の中を突っ切る必要はあるのだろうか。 鳥の鳴き声や蝉の鳴き声が響いているここを。 僕は視力が良いのでわかるが、横から900Mほど進めば至って普通の通学路になっていそうな住宅街が並んでいる。でもあの良い人である吉野さんが教えてくれた道だ。 余計な邪推はやめよう。それに時間がない。そんなくだらないことを考えていると。 「どうして無視するんですかぁぁぁぁぁあ!」
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