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声にならない声を上げて、ようやく彼女は僕の顔面から足をどけてくれた。 顔を真っ赤にしながらお腹の下あたりをスカートの上から両手で覆うように隠す。 「変態!ゲス!性犯罪予備軍!」 予備軍なのか、それにしても初対面だってこと忘れてるんじゃないかと思うくらい容赦ないな……。流石に泣くよ僕。でも僕も漢だ。負けっぱなしではいられない。 「そうですか、お嬢様。でもね、はっきり言って一般的に考えれば、自ら男性に自分の下着を見せつけるあなたのほうが変態だと思いますよ。ねえ、痴女お嬢様?」 決まったな。言いたいことは言ってやった。僕は満足だ。 「最低よ!あんた!本当に死ね!!!」 刹那。 その一撃はとても重かった。それはもう鉛のように重かった。TKOだった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー区切り線ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「あのー大丈夫ですか?もしもーし」 僕の体が揺さぶられている感覚。僕は閑静な雑木林の中で気を失っていたのだった。 「ん……。おはよう」 「よかった……気がついたんですね。てっきりお亡くなりになってるのかと」 眼前の見知らぬ女性が安心したように息を吐く。 「すみません、なんだか心配させてしまって」 僕は体を起こして立ち上がるが、少し立ちくらみがする。 「痛っ……」 「本当にだいじょうぶですか!?」 また倒れそうになった僕を彼女は支えてくれた。良い人だ。大泣きしそう。 「たびたびすみません。さっき殴られた痛みがまだ残っていたみたいで」 「殴られた!?どおりで鼻血を出しながら倒れていたわけですね。あ、鼻血は拭いておきましたよ。素敵な顔が台無しですんもんね」 なんだ、この天使は。僕の住んでる世界にはこんな同年代の天使が存在していたのか? 同年代というのは僕の勘である。僕の能力の一つに良い人の年代をほぼ正確に察せるものがある。嘘である。ただの勘である。 「あ、ありがとうございます。感謝してもしきれないのでどうかあなたの名前をおしえてくれませんか?」 「いえいえ、私の名前ですか?いいですよ、一年の朝露 蓮華(あさつゆれんげ)です。こう見えて将来の夢は看護婦さんです!あなたは?」 水面を彩る花のような笑顔で朝露さんは僕に自己紹介してくれた。
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