第1章気が付いたら、死んでいました。

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第1章気が付いたら、死んでいました。

と、そこまでは覚えている。目をつぶり、子供をぎゅっと抱きしめて。来るべき衝撃に耐えるべき。だが、しかし。恐る恐る目を開けたら、そこには見知らぬ世界が。 私は、平置きのだだっ広い場所にいて、やたら裾を引きずるような長い着物らしきものを着、まるで昔の平安時代のお姫様!?のような格好で。極め付けは、床まで届く黒々とした長い髪(重い!?)。唖然として自分の格好を眺め。(ここ、どこ??)と思い。 ひたすら呆然とし、途方にくれた時。誰かに話しかけられて、びっくり仰天する。「ー姫様、姫様、聞いておられるのですか?』 ーと。だがしかし、だれこの人?状態の私を放っておいて、会話は勝手に進んでいく。 振り返り、微笑する私??『大丈夫よ、藤乃。ちょっとぼうっとしていただけ。なんでもないわ』 そこにいたのは、自分の格好よりやや落ち着いた格好をした、色白丸顔の人の良さそうなおそらく30すぎぐらいのおばさん。ちょっとぽっちゃり系だけど、なんとなく穏やかそうな、藤乃と呼ばれたおばさんは、私の答えになぜか眉をひそめ。 『姫様がぼうっとするなんて珍しいですわね。風邪でも召されましたか?もう夜も遅おございます故、そろそろお休みなされませ』 と、心配そうに言ったのだ。 いつもねた私だったら、放っておいてよ、と家族に怒鳴りつけたりするのだけど。私はどこまでも穏やかに微笑み。 『そうね、月がね、とっても綺麗だったから、思わず見とれちゃったのよ。今日は満月だったのね』 『おや、言われてみれば。通りで今宵は魔物が静かだと思いましたわ』 ーーー、えっ、魔物って言った、今??しかも、月、2つうかんでない?? そうなのだ、夜空には月が2つ浮かんでいるのだ。だけど、私の困惑とは裏腹に、2人は平然とした顔をしているし、この世界では当たり前なのかもしれない。と、言うことは、もしかしたら、魔物も?私の背中に、つぅっと冷や汗が。 混乱する私を置いてきぼりにし、会話をは続く。 『そうでしょ、魔物が活性化するのは、月のない夜。しばらくぶりに静かな夜を満喫していたけど、確かにそろそろ冷えてきたわね。おまえの言う通り、休むとするわ』その言葉に満足そうにうなづく藤乃さん。 『それがよおございます。ただ今、寝所を整えて参ります。しばらくお待ち下さいませ』 そう言って、頭を下げ、静かに部屋から出て行く藤乃さん。
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