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天翔は刹琳に尋ねられるのを待っていたかのように、話し始める。
「崩御する直前、皇帝は私を含め、三人の皇子らに王位継承について書かれた勅書【秘密立儲】を託した。勅書には、次代王になるための条件が記されていた。それは、黄寿に伝わる秘宝を見つけることだった」
「秘宝、ですか?」
「――空を飛ぶ船【飛行船】。黄寿国に伝わる、秘宝の一つだ。飛行船の隠された場所を記した地図を勅書に記し、皇帝は亡くなった」
この国の皇帝が亡くなっていた――それすらも、刹琳は知らなかった。
外界から遮断された神殿からは、国の様子が何も分からない。
そのせいで皇帝が亡くなったと言われても、実感がわいてこなかった。
「秘宝を見つけることが玉座に着く条件だが、飛行船を探す途中で、他の皇子たちに必ず妨害されるだろう。現に、私が刹琳殿を迎えに行くことが他の皇子に気づかれていたようだ。そのために陸族の里は襲われてしまった」
天翔は声を沈めて言った。
「もしもここで、刹琳殿が私に力を貸さないと言うのなら、私はこの里を見捨てる」
刹琳達の間に、緊張が走る。切れ長な双眸が、本気だと語っていた。
ここでこの話を断れば、この男は目の前で里が山賊に焼かれようと見過ごす。脅しにも似た言葉に、刹琳は唇を噛みしめる。
「貴女には私が王座を奪うための協力をしてもらいたい」
俯く刹琳の肩に、天翔は手を置いた。
刹琳は伏せていた顔をあげる。
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