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「廉の言うとおりだな。早く、この場から離れた方がいい」  天翔が言うと、廉と呼ばれた男は頭を下げた。 「では、今すぐ飛竜を連れてきます」 「まて、廉」  天翔は廉を引き留めると、跪いたままだった刹琳を立たせた。 「私の飛竜はいらない。こっちの方が速いからな」  そう言うと、天翔は刹琳の肩に乗せた手を頬へ滑らせた。頬に触れた冷たい感触に、背中が粟立つ。  天翔と目があったとたん、刹琳の脳裏に嫌な予感が駆け抜けた。 (まさか、また――)  と、思った時には刹琳の唇は天翔に奪われていた。  二人の間に突風が巻き起こる。光と共に現れた黄竜の背に、気づけば刹琳は乗っていた。その後ろに乗っているのは天翔だ。   黄竜が羽ばたき巻き起こった風が、庭園の油桐花を揺らした。白い花びらを舞い上げながら、黄竜は地面を蹴る。 「お、お待ちくだされ! 刹琳さま!」  黄竜が飛び立った瞬間、鳳李が黄竜の尾に飛びついた。 「鳳李、何をしているのです! 怪我をする前に早く離れなさい!」 「いいではないか、刹琳殿。随分と度胸のある少年だ。刹琳殿も一人では何かと不安だろうから、このまま連れて行こう」  天翔は楽しそうに高笑いをあげた。彼には着陸する気は毛頭ないらしい。 「では、少年。振り落とされないよう、気を付けるんだぞ。 ――行け、黄竜!」  天翔が命じた瞬間、黄竜は瞬く間に天高く昇って行った。
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