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竜神の加護を受ける黄寿国には、六つの有力な部族がいる。   その昔、彼らの先祖は大陸からこの島国へ渡って来た。始祖と呼ばれる六人は、当時島を支配していた迦楼羅(かるら)という鳥神を封じた。それを喜んだのは、迦楼羅と敵対していた竜神【那阿我(なあが)】だった。   那阿我は喜び、彼らに自分の子供の力を与えた。那阿我の子である五頭の精竜は、黄竜、赤竜、青竜、黒竜、白竜という。精竜の力を得た六つの部族は、国を創り、自らを竜衆と名乗るようになった。   王族となった黄族の者たちは、竜衆の中から有力な者達を六人集めた。彼らは王を守る六竜士と呼ばれるようになった。 「……そして、先代王がお倒れになった時、我らは次代六竜士に任命されました。元々、飛竜を主に用いる飛竜軍の者達の中から選ばれたのですが、六竜士の中に王族の方が選ばれるのは、前代未聞の事。六竜士をまとめる天翔様は、竜帝という異名をもっているのですよ」   廉の説明を聞きながら、刹琳はふらふらと頭を揺らした。 (き、気持ち悪い) 雲に届きそうなほどの高さに、頭がくらくらする。そんな刹琳に気づくことなく、竜帝の異名を持つ皇子は快活な声で言った。 「やはり、黄竜は普通の飛竜とは乗り心地が違うな。――刹琳殿。気持ちがよいでしょう?」 「気持ちが良い、ですか? それは、わたくしを笑わせようとしておられるのですか?」 刹琳はふらつく頭で、何とか天翔の胸にしがみ付いていた。相手が一国の皇子で、しかも里の命運を握っている相手でも、今は気遣う余裕がない。
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