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笑いをあげたのは、大柄で屈強な男だった。上半身をさらけ出した特殊な戦袍を着た男を、その隣を飛んでいた男がとがめる。
男と言っても、年は刹琳と同じくらいだろうか。凱清という大柄な男の隣にいると、なお小柄に見える少年だった。どこか天翔に似た、知的で美しい顔立ちと線の細い体を見る限り、到底武官とは思えなかった。
「伯儀様、いいではないですか。本当の事なのですから。顔面が蒼白なままよりも、遥かにましです。あのまま、倒れられたりしては迷惑ですから」
少年を伯儀と呼んだのは、一番後ろを飛んでいた年若い男だ。
冷たい眼差しからは、露骨な警戒心を感じる。眉間によった皺と、鋭い三白眼に睨まれ、刹琳は「ひっ」と悲鳴をあげる。
「やめろ、龍乾。それ以上の無礼を口にすれば、幾らお前でもここから地面に叩き落とす。いいな?」
天翔が言うと、龍乾と言う男はすぐに口をつぐんだ。
「――お前たち、進路を変更する。近くにある街へ一度降りるぞ」
天翔が一声かけると、一斉に飛竜たちは降下をはじめた。
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